中学の頃、女子高のテニスコートの見える塾に通っていた。 そこで一緒に数学を習っていた彼女は、色が白く
て、髪は長く、おさげにしてるか、後ろで一つに縛っていた。 その曜日はいつも、生徒は僕達二人だけだった。 
 かすかに開けられた窓からは、テニスコートで球を打ち合う音や掛け声が聞こえてきた。 あるいは涼しげな風
だったり。 僕は彼女と一度も口を利いたことがなかった。 ただ、一つ年上だった彼女が来年はすぐそこの女子高
に入学し、テニス部に入って、友達と楽しそうに笑いあう声を、僕がここで一人聞いている未来、などを想像したり
していた。 彼女は問題を解き終えると、先生がおやつに出してくれるヨーグルト風味の飲み物を一気に飲み干し、
先に帰って行った。それから僕は我に返り、問題を解き始める。 ・・・櫻の花が風に散る頃、ふと、昔を思い出した。
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